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アーサー・D・リトル(ジャパン)

2014年06月13日

Firm: アーサー・D・リトル(ADL)
Interviewee: 高田貴久 様
              プレセナ・ストラテジック・パートナーズ 代表取締役CEO
Interviewer: 平石真寛 (2014年度内定者)

 
 大阪府出身。東京大学理科Ⅰ類中退、京都大学法学部を卒業後、戦略系コンサルティングファームであるアーサー・D・リトル(ジャパン)に入社。プロジェクトリーダー・教育担当・採用担当を務める。その後、クライアントであったマブチモーター株式会社へ転職し、社長付兼経営企画部付・事業基盤改革推進本部 本部長補佐として、改革を推進。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2006年にプレセナ・ストラテジック・パートナーズを設立。業界のリーディングカンパニーに対し、ビジネススキル研修、MBA研修を中心としたカスタマイズ研修を提供している。
 
【ADLを選んだ理由】
 私のもともとのバックグラウンドは理系で、コンピュータや新しいテクノロジーが好きだったんです。そこで、コンサルティングに興味を持ち始めた直後は、ITコンサルティングファームを志望していました。同時に、就職活動をしている中で、業務系や会計系、戦略系ファームのことも知り、それらも意識するようになりました。最初に興味のあったITコンサルティングでは、すでに作られたシステムを導入することはあっても、自分自身がコンピュータやプログラミングに直接関わることはほとんどないということを知った後は、全社的な戦略立案や意思決定に関わる戦略系ファームで働くことを考えるようになり、その中でもメーカーのコンサルティングに強みを持つADLに惹かれるようになりました。
 また、内定が出た後に社員の方とお話して、日本を支える輸出系の製造業をサポートする姿に共感したことや、メーカーがクライアントであると、開発や製造機能があるためにバリューチェーンが長く、イシューが面白そうであると感じました。
 このようにして、主にメーカをクライアントとした戦略コンサルティングを行うファームであるADLに入社することを決めました。きれいな社員の方がいたことも決め手でしたね(笑)
 
【入社後の仕事内容】
 ADLが関わる業界としては、ざっくりと物理、化学、生物のように分けられます。人によっては、それぞれに特化する人もいましたが、私はメーカーの中でも幅広く経験を積みたいと考えたので、各分野のディレクターに掛け合って一通りの業界(金融・精密機器・通信・自動車・食料品・化学・半導体・電気機器など)でお仕事させていただきました。また、イシューもSPRO(Strategy, Process, Resource, Organization)、つまり戦略、業務プロセス、経営資源、組織と大きく分けることができ、新規事業立案・商品戦略立案・業績評価制度作成・組織改革・知的財産戦略立案・全社戦略立案などに携わりました。以下に、具体的な内容を2例挙げます。
・IT会社における新規事業立案
 携帯電話が流行し始めた頃に、次世代の通信技術の動向を分析・予測し、それに向けた新規ビジネスの考案を担当しました。今となっては当たり前のことですが、動画配信やeコマースサービス、ポータルサイトの開設、あるいは、ウェアラブルコンピュータの開発などのビジネスモデルを提案しました。
・ 塗料メーカーにおける全社戦略立案
 それまでは一様だった塗料製品の用途や販売方法、組織体制を見直し、セグメンテーションを行い、それに基づく戦略を立案しました。これによって、事業が整理されただけでなく、継続的に戦略面での議論が行われたり、個々の社員が全社戦略を意識するようになりました。
 
【入社後のファームに対する印象】
 まず驚いたのが、クライアントの規模が大きいことでした。もちろん入社前にはクライアント名が明かされておらず、自分がどのような規模のプロジェクトにアサインされるかは予想もついていませんでしたが、名の通った企業のプロジェクトに関わることで、大きなインパクトのある仕事をしているという実感を得ました。
 また、新卒にも中途に対しても先輩社員の面倒見が良かったと思いますし、意外にも「Up or Out」の世界ではありませんでした。あるプロジェクトで良い成果の残せなかった人間に対しても、他の業界や領域で活躍できる可能性がある、という理解が広がっていたと思います。
 さらに、外資ファームではありましたが、思っていた以上にドメスティックでした。世界中のオフィスから集められたデータベースが充実していたり、国外の案件を他国のオフィスと協働して担当する場合もあり、グローバルファームならではの側面もありましたが、基本的には日本の企業をクライアントとし、日本人とお仕事させていただいていました。
 
【ファームの強み、長所】
 まず一つめは、製造業にフォーカスしていて、そこに関する知見が深いことです。上にも述べた、グローバルデータベースには世界中のメーカーのプロジェクト例が残っていて、それらをノウハウとして参照することができます。また、クライアントがメーカーであるプロジェクトに重要な、「コンセプト」が蓄積されています。ここでいうコンセプトとは、汎用性のある問題解決メソッドやプロジェクトに対する考え方のことです。例えば、一時、コンサルティング業界でコストカットアプローチが流行していたときがあります。しかし、このときからADLが唱えていたのは、本質的な改革のためには、イノベーションのトップラインを伸ばすことが必要であるということです。これらのコンセプトが引き継がれていることが、ADLの強みの一つだと思います。
 また、社員数が少ないため、年次が浅いうちから裁量権が大きく、若手が育つ土壌があります。アナリストでありながら、プロジェクトリーダーのような仕事をしたことも多くありました。
 
【ファームの弱み、短所】
 同時に、若いときからの責任が大きいために、早期ドロップアウトしてしまう人が少なからずいます。自分で自分を伸ばすことが出来る人には良い環境ですが、手厚い教育制度は期待出来ません。
 また、保守的であることが弱みと言えるかもしれません。製造業にフォーカスしているので、新しい分野にうって出て行くことはありません(この点は長所でもあり、会社の業績が短期的なトレンドによって振り回されることはありません)。
 
【向いている人・不向きな人】
 向いている人は、やはりメーカーが好きな人、そして研究者タイプでテクノロジーに興味を持つ人だと思います。社内には、テッキー(テクノロジーオタク)という言葉もあるほどです。
 そして、不向きな人としては、保守的なファームですので、新しいもの、つまり新しいビジネスや新しい方法などを好む人、取り扱う分野の拡大を志向する人、大きな組織を好む人が挙げられると思います。
 
【ファームを卒業した理由】
 最大の理由は、当時のクライアントからのオファーがあり、関わっていたプロジェクトを完遂させたいと思ったためです。コンサルタントとして1年間関わっていたプロジェクトを実行まで落とし込み、その結果を社員として自分で確認したいと思いました。
 もう一つは、事業を経験したいと考えたからです。当時、私たちの先輩社員はかなり上の世代の方たちで、キャリアが断絶されているように感じ、ADLに残ることに少し疑問を抱いていたところでした。そこで、若いうちからもっと多くの事業を経験し、お客様の立場を知ることが将来のためにも良いだろうと考えました。
 さらに、創業社長の側につくことができた点も、ADLを卒業しようと決めた理由の一つです。1000億円規模の会社を立ち上げ、現役で活躍している本当の経営者を見ることができる機会を逃したくないと思いました。
 
【その他、後輩への一言】
 これからのコンサルタントには考え抜くことが重要です。一昔前は、情報インフラや分析ツールが今ほど発達していなかったために、世界中の情報を集め、それらを整理してクライアントに提供することで一定の価値を出せていました。しかし、誰でも簡単に様々な情報にアクセスでき、クライアントも多くのコンサルティング経験者を抱えるようになった現代では、求められる力が異なります。何もないところからデータを集め、出てきたデータの本当の意味を読み取る力、あるいは、誰も言い出せないようなことに対して、関係者の利害を調整して、組織のベクトルを一本化する力などが求められています。どのように自分の価値を出していけるかを考え抜いて頑張ってください。
Firm: アーサー・D・リトル(ADL)
Interviewee: 高田貴久 様
              プレセナ・ストラテジック・パートナーズ 代表取締役CEO
 
 大阪府出身。東京大学理科Ⅰ類中退、京都大学法学部を卒業後、戦略系コンサルティングファームであるアーサー・D・リトル(ジャパン)に入社。プロジェクトリーダー・教育担当・採用担当を務める。その後、クライアントであったマブチモーター株式会社へ転職し、社長付兼経営企画部付・事業基盤改革推進本部 本部長補佐として、改革を推進。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2006年にプレセナ・ストラテジック・パートナーズを設立。業界のリーディングカンパニーに対し、ビジネススキル研修、MBA研修を中心としたカスタマイズ研修を提供している。
 
【ADLを選んだ理由】
 私のもともとのバックグラウンドは理系で、コンピュータや新しいテクノロジーが好きだったんです。そこで、コンサルティングに興味を持ち始めた直後は、ITコンサルティングファームを志望していました。同時に、就職活動をしている中で、業務系や会計系、戦略系ファームのことも知り、それらも意識するようになりました。最初に興味のあったITコンサルティングでは、すでに作られたシステムを導入することはあっても、自分自身がコンピュータやプログラミングに直接関わることはほとんどないということを知った後は、全社的な戦略立案や意思決定に関わる戦略系ファームで働くことを考えるようになり、その中でもメーカーのコンサルティングに強みを持つADLに惹かれるようになりました。
 また、内定が出た後に社員の方とお話して、日本を支える輸出系の製造業をサポートする姿に共感したことや、メーカーがクライアントであると、開発や製造機能があるためにバリューチェーンが長く、イシューが面白そうであると感じました。
 このようにして、主にメーカをクライアントとした戦略コンサルティングを行うファームであるADLに入社することを決めました。きれいな社員の方がいたことも決め手でしたね(笑)
 
【入社後の仕事内容】
 ADLが関わる業界としては、ざっくりと物理、化学、生物のように分けられます。人によっては、それぞれに特化する人もいましたが、私はメーカーの中でも幅広く経験を積みたいと考えたので、各分野のディレクターに掛け合って一通りの業界(金融・精密機器・通信・自動車・食料品・化学・半導体・電気機器など)でお仕事させていただきました。また、イシューもSPRO(Strategy, Process, Resource, Organization)、つまり戦略、業務プロセス、経営資源、組織と大きく分けることができ、新規事業立案・商品戦略立案・業績評価制度作成・組織改革・知的財産戦略立案・全社戦略立案などに携わりました。以下に、具体的な内容を2例挙げます。
・IT会社における新規事業立案
 携帯電話が流行し始めた頃に、次世代の通信技術の動向を分析・予測し、それに向けた新規ビジネスの考案を担当しました。今となっては当たり前のことですが、動画配信やeコマースサービス、ポータルサイトの開設、あるいは、ウェアラブルコンピュータの開発などのビジネスモデルを提案しました。
・ 塗料メーカーにおける全社戦略立案
 それまでは一様だった塗料製品の用途や販売方法、組織体制を見直し、セグメンテーションを行い、それに基づく戦略を立案しました。これによって、事業が整理されただけでなく、継続的に戦略面での議論が行われたり、個々の社員が全社戦略を意識するようになりました。
 
【入社後のファームに対する印象】
 まず驚いたのが、クライアントの規模が大きいことでした。もちろん入社前にはクライアント名が明かされておらず、自分がどのような規模のプロジェクトにアサインされるかは予想もついていませんでしたが、名の通った企業のプロジェクトに関わることで、大きなインパクトのある仕事をしているという実感を得ました。
 また、新卒にも中途に対しても先輩社員の面倒見が良かったと思いますし、意外にも「Up or Out」の世界ではありませんでした。あるプロジェクトで良い成果の残せなかった人間に対しても、他の業界や領域で活躍できる可能性がある、という理解が広がっていたと思います。
 さらに、外資ファームではありましたが、思っていた以上にドメスティックでした。世界中のオフィスから集められたデータベースが充実していたり、国外の案件を他国のオフィスと協働して担当する場合もあり、グローバルファームならではの側面もありましたが、基本的には日本の企業をクライアントとし、日本人とお仕事させていただいていました。
 
【ファームの強み、長所】
 まず一つめは、製造業にフォーカスしていて、そこに関する知見が深いことです。上にも述べた、グローバルデータベースには世界中のメーカーのプロジェクト例が残っていて、それらをノウハウとして参照することができます。また、クライアントがメーカーであるプロジェクトに重要な、「コンセプト」が蓄積されています。ここでいうコンセプトとは、汎用性のある問題解決メソッドやプロジェクトに対する考え方のことです。例えば、一時、コンサルティング業界でコストカットアプローチが流行していたときがあります。しかし、このときからADLが唱えていたのは、本質的な改革のためには、イノベーションのトップラインを伸ばすことが必要であるということです。これらのコンセプトが引き継がれていることが、ADLの強みの一つだと思います。
 また、社員数が少ないため、年次が浅いうちから裁量権が大きく、若手が育つ土壌があります。アナリストでありながら、プロジェクトリーダーのような仕事をしたことも多くありました。
 
【ファームの弱み、短所】
 同時に、若いときからの責任が大きいために、早期ドロップアウトしてしまう人が少なからずいます。自分で自分を伸ばすことが出来る人には良い環境ですが、手厚い教育制度は期待出来ません。
 また、保守的であることが弱みと言えるかもしれません。製造業にフォーカスしているので、新しい分野にうって出て行くことはありません(この点は長所でもあり、会社の業績が短期的なトレンドによって振り回されることはありません)。
 
【向いている人・不向きな人】
 向いている人は、やはりメーカーが好きな人、そして研究者タイプでテクノロジーに興味を持つ人だと思います。社内には、テッキー(テクノロジーオタク)という言葉もあるほどです。
 そして、不向きな人としては、保守的なファームですので、新しいもの、つまり新しいビジネスや新しい方法などを好む人、取り扱う分野の拡大を志向する人、大きな組織を好む人が挙げられると思います。
 
【ファームを卒業した理由】
 最大の理由は、当時のクライアントからのオファーがあり、関わっていたプロジェクトを完遂させたいと思ったためです。コンサルタントとして1年間関わっていたプロジェクトを実行まで落とし込み、その結果を社員として自分で確認したいと思いました。
 もう一つは、事業を経験したいと考えたからです。当時、私たちの先輩社員はかなり上の世代の方たちで、キャリアが断絶されているように感じ、ADLに残ることに少し疑問を抱いていたところでした。そこで、若いうちからもっと多くの事業を経験し、お客様の立場を知ることが将来のためにも良いだろうと考えました。
 さらに、創業社長の側につくことができた点も、ADLを卒業しようと決めた理由の一つです。1000億円規模の会社を立ち上げ、現役で活躍している本当の経営者を見ることができる機会を逃したくないと思いました。
 
【その他、後輩への一言】
 これからのコンサルタントには考え抜くことが重要です。一昔前は、情報インフラや分析ツールが今ほど発達していなかったために、世界中の情報を集め、それらを整理してクライアントに提供することで一定の価値を出せていました。しかし、誰でも簡単に様々な情報にアクセスでき、クライアントも多くのコンサルティング経験者を抱えるようになった現代では、求められる力が異なります。何もないところからデータを集め、出てきたデータの本当の意味を読み取る力、あるいは、誰も言い出せないようなことに対して、関係者の利害を調整して、組織のベクトルを一本化する力などが求められています。どのように自分の価値を出していけるかを考え抜いて頑張ってください。