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意思決定されない企画はただの紙屑である。

2013年10月25日

10割まで精査した企画があれば意思決定は要らない。3割の企画で決断するからこそ、意思決定には意味がある。大切なのは「いかに不完全な情報で、正しい決断をするか」
「コンサルティングという職業は紙を書いて意思決定を迫る」仕事だと私は教わった。 コンサルタントは良くも悪くも部外者である。一生その会社に居る訳ではないので、長期の施策を実行するのはお客様だ。長期の施策、大きな施策を実行するには、組織全体で大勢の人が動かなければならない。大勢の人に動いてもらうためには、大きく2つのやり方がある。 1)王道:目的や趣旨を説明し、賛同を得て、協力してもらう 2)邪道:なし崩し的に外堀を埋めて、知らず知らずのうちに協力させる 正直、最近は2)の進め方をしていることが多い。簡単な例を挙げよう。例えば、ある会議で議論すべき内容が議論されていなかったとしよう。王道で行くならば「この会議の趣旨・目的はこうなので、こういう事前準備をして、こういう話をして下さい!」とお願いをして、参加者の協力を得るというやり方をする。邪道的に進めるならば、議論してもらいたい項目を書いた「フォーマット」を事前に作って配ってしまい、「当日までに埋めて来て下さい」とやってしまう。同時に、議論してもらいたい資料はこちらで先に準備してしまい、会議の当日の議題も先に作って、参加者も増やしたり減らしたりして調整して、イヤでも目的にかなった議論をせざるを得ないような状況を作り出す。 これはどちらが良い悪いという問題ではない。実際、私自身も2)の割合が多くなっているとはいえ、局面に応じてどちらが適切な進め方かというのは都度都度判断した上で使い分けをしている。 コンサルタントは自らが意思決定出来ない上に自らが主体となって行動する訳に行かないため、どうしても1)の進め方となってしまう。目的や趣旨を説明して、賛同を得て協力してもらうためには、ファクトとロジックで構成される紙を書いて説明するのが一般的だ。勿論、口頭だけで相手を動かすことが出来れば素晴らしいのだが、宗教家でもない限りなかなかそうはいかない。 --- 話を元に戻そう。1)の進め方と2)の進め方の本質的な違いは、「誰が動いているのか」ということである。1)はあくまでも他人を動かしている。2)はある程度の所まで自分が動いている。どこかにも書いたかもしれないが、仕事というのは「行動」してナンボである。アタマの中で幾ら考えていても全く意味が無い。アタマで考えたことを口に出して人に説明する。形にしてアウトプットする。それも立派な「行動」だ。とにかく「行動」しない限りは成果は生まれない。なので、1)であっても2)であっても最後は人間が「動く」。 上手くまとまらないのだが、何が言いたいかというと、小さな案件であれば、担当者が勝手に物事を推進出来る訳であるが、大きな案件などになって大きな判断が必要となった場合には、意思決定をすべき人間がきちんと意思決定をした上で、「おまえら全員動け!!!」と号令をかけなければならないということだ。意思決定がなされないと、幾ら企画をして紙を作った所で、最終的には誰も動かないので成果には繋がらず、全く意味が無い。意思決定が機能しない場合には1)の進め方というのは効果的ではなく、2)でなし崩し的に関係者を巻き込んで勝手にチマチマと推進する方が寧ろ効果的だったりする。 それから、意思決定をする際に重要なことは、「いかに不完全な情報で、正しい決断をするか」ということだ。10割の情報を元に、10割のロジックを作った企画物があれば、はっきり言って誰だって意思決定出来る。なぜなら、見れば答えが書いてあるからだ。10割の企画物を求めていつまでも精査を続けていたら、幾ら時間と工数があっても足らない。大事なのは、「いかに情報や論理が不完全な状態で、さっさと決断をするか」である。ただ、決断が早くても間違っていたら意味がない。なので同時に「正しい決断をすること」が大事だ。(この「正しい決断とは何か」を説明するとえらく長くなるのでこれは別途改めて説明したい)またコロコロと結論が覆っていたのでは、これも意思決定の意味を為さない。「その決断が首尾一貫していること」もまた重要である。 さっさと決断すれば、物事はある程度は進む。簡単な例で、例えば30分の試験があったとしよう。問題Aは配点が40点、問題Bは配点が60点だとする。問題Aから解くべきか、問題Bから解くべきか、悩んでいる間はAもBも進まない。ここで時間切れになると0点である。また折角Aを解き始めたのに、途中で「やっぱりBだ!」と方針変更して、また「うーん、でもAか?」と変更して・・・とやり始めると、結局これも0点で終わってしまう。しかし、AでもBでもどちらでも良いから、ひとまず取り組んで時間内に答えが出れば、最低40点は取れる。非常に当たり前の話ではあるが、ビジネスの世界では試験が始まっているのに「Aの問題が簡単か・・・いや、Bの方が簡単そうだ。しかしBは解けなかったら△をもらうのは難しいが・・・うーん、Aは解けなくても△ぐらいはもらえるかな・・・」と延々と悩んでいる人が少なくない。 --- 改めて言うが、意思決定されない企画は、ただの紙屑である。10割の企画物を求める意思決定は、意思決定とは言わない。ビジネスの意思決定で大切なのは、「いかに不完全な情報で、正しい決断をするか」ということ。優秀な経営者とは、この「意思決定」が出来る人なのではなかろうか。