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コンサル入社 1ヶ月目

2013年10月25日

英国金融ビッグバン?プロポ?マテ?カザノブ証券?
皆さんこんばんは。作者です。 キャリアインキュさんのサイトに連載していた「コンサルスキルを身につけろ!」は結構ご好評を頂いているようで、よく「コンサルがどんな仕事をするかイメージがわかりました」とか、ご意見を頂きます。 が、僕にしてみたら文字数の関係もあって、あまり詳しく書けていないので、実態をイメージして頂くならもうちょっと詳しい方がいいのではないか・・・と思ったりします。 ということで、もう遠い昔のことですが、「ちょっと懐かしい思い出話」ということで、過去を振り返ってもう少し詳しく書いてみますね。 たまーに、思い出してupdateすると思います(^^) ------------------------- ■コンサル入社1ヶ月目 1998年の9月。僕はコンサルティングファームに入社した。大学を留年しており卒業は99年の3月だったが、単位がそろったので早めに入社したのである。 入社したのは僕1人。同期は半年後に入ってくる。1つ上の台に新卒の人たちが5名居て、殆どが同い年か年下だったが、やはり「同期」ではないので親しくはない。 入って一番最初に、Kマネジャーに言われた仕事は・・・ 「ABC証券会社から引き合いが来たのでプロポを書きたいんだよね。今後日本でも金融ビッグバンが起きると思うので、英国の金融ビッグバンについて調べてくれない?あとカザノブ証券は英国の金融ビッグバンを生き延びた名門だからベンチマークしといて。取り敢えずマテは10枚ぐらいでいいから明後日までにお願いね。」 全く意味がわからなかった。プロポって何?金融ビッグバンって何?カザノブ証券ってどこ?ベンチマークって何?マテって何??? --- 今でこそわかるが、プロポというのはプロポーザル、つまり企画書である。引き合いが来た時に相手側とディスカッションをするために作る資料で、相手の環境理解、自ファームの特徴、今回の引き合いに対しての仮説、プロジェクトアプローチ紹介、過去の実績紹介、会社概要、プロジェクトメンバーのバイオ(略歴書)などで構成される。 ベンチマークとは、比較検討をすること。論点、つまり「目的に照らした場合に明らかにしなければならない意思決定項目のうち、今議論の争点となっている部分」に対して、比較検討によって然るべき情報を示すことで意思決定に役立てる・・・という話。 マテというのはマテリアルの略、つまり日本語で言えば「資料」。・・・だったら、「資料」って言えばいいじゃん、と思うがなぜかコンサル業界では「マテ」と言う。 金融ビッグバン。本で色々見たけど忘れました。カザノブ証券。ここもヒアリングに言ったけど、「英国の金融ビッグバンは数十年も前ですし、増して英国本社の話なので、東京支社で聞かれてもわかりません・・・」という答えだった、ということしか覚えていない。 --- 調べろと言われたものの、何をして良いのか全くわからない。同期もいないので質問も出来ない。社内で知っている人は誰もいない。そもそも、社内のどこに何があるかもわからないし、どういう手段で調べられるのかもわからない。 ただ自力で頑張るしかないと思って、社内をうろつく。そうすると色んな雑誌や調査本などがあるので、片っ端から関係ありそうなものを探す。・・・ヒットしそうなものは無い。 インターネットで色々と検索する。が、有力な情報は出てこない。そういえば、有料データベースってのがあったっけ。使い方が良くわからないけど、適当にいじってみる。記事の表示が1件50円って出てきたぞ・・・これって使っていいのだろうか?数百円ぐらいならいいのかな・・・わからないけど表示しちゃえ。 本屋にでも行くか。みんな本屋はどこへ行くのだろう。虎ノ門の駅の近くに何かあったような気がするから行ってみるか・・・(注:本当は八重洲ブックセンターなどに行くべきで、そんな近所の本屋に行っても欲しい本は無い!) とにかく良くわからないが、走り回って1日が終わった。やばい、何も調べられていない。夕食の時間だけど、どうしよう。。。ビルの1Fにローソンがあったから、お弁当を買ってこよう。 ブースで一人で弁当を食べながら情報をひたすら探す。何か難しいことが書いてあって、良くわからない。金融ビッグバンって何だよ!!! ABC証券のホームページもくまなく読む。大したこと書いてないなぁ・・・。(注:本当は有価証券報告書などを見なければならなかった!) 気付けばもう0時近い。どうしよう。帰るべきだろうか。でも家は春日部だし帰るのに1時間半ぐらいかかる。しかも朝はきっと起きられない。会社に泊まっていいんだろうか・・・でもブースだから勝手に寝ればバレないんじゃないかな? いやでも、セコムとかが動いたらどうしよう・・・ と悩んでいるうちに、終電が無くなってしまった。仕方ない。入社してまだ2日目だけど、今日は会社で泊まろう。 そこから先もずっと情報を探す。いいのが見つからない。気付けば明け方なので、ブースの床に転がった。ちょっと寝よう。 --- 翌日、仕事を頼んだKマネジャーが来た。 「高田君、出来た?」 「すみません、出来てません」 「あっそう。期待してるから頼んだよ」 同じく1日、ひたすら情報を探した。何も見つからない。焦り度ピークに達する。朝もローソンで買ったが、昼もローソン弁当、夜もローソン弁当。入社した日の昼から、5食ローソン弁当が続いている。これ、ちょっとヤバイかも。 また夜になった。帰れない。さすがに2日も風呂に入っていないと汚いので、コンビニへ歯ブラシとシャンプー、小さなタオル、そしてエイトフォーを買いに行く。パントリーの流し台で髪の毛を流してハミガキをして、エイトフォーをかけて、取り敢えずまたブースの床に転がる。 --- 次の日、またKマネジャーが来た。 「出来た?」 「すみません・・・まだ出来てないんです・・・」 「何やってんの。何で出来てないの」 「すみません・・・情報が無くて・・・」 「馬鹿野郎。お前この2日間何してたんだよ」 Kマネジャーはとても頭の切れる人だが、パッと見がとっても怖い。(注:実際はすごくいい人で今でも仲良くさせて頂いてます(^^) ) そこから厳しいことを色々言われたが、完全に恐怖に怯えている僕に、Kマネジャーは色々と教えてくれた。 取り敢えず3日目にして、終電間際に家に帰った。家に帰ったといっても、まだ東京に出てきて2週間ぐらいしか経ってないので、愛着も何もなく、安堵感もない。 ちなみに、結婚資金をためようと思って春日部に住んでいた。29平米の2DKで、家賃は4万7千円。駐車場が5千円で、あわせて5万2千円。その代わり、東武伊勢崎線の「せんげん台」駅から歩いて10分。アパートで築35年ぐらいだっただろうか・・・。隣の家にニワトリが居て、毎朝日の出と共に鳴くので凄く迷惑だった。 --- 風呂に入って少し寝て、また会社へ向かう。 朝昼夜、ローソン弁当。 さらに2日ぐらい経過した。 同期もいない。友だちもいない。話をするのは、怖いKマネジャーだけ。 しかも、ブースに来る度に「出来た?」と言われる。 俺、このまま死ぬんじゃないか? 俺がせんげん台のアパートで死んでたら、誰か発見してくれるかな? 真剣にそんなことを考えた。